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     第1部 単文(1)   基本述語型と修飾語

 

    単文を、単純な述語による「基本述語型」と、その述語にさまざまな要素が付いた「複合述語」の 二つに大きくわけて説明します。
   第1部ではまず「基本述語型」を取り扱います。そして、それにつけ加えられるさまざまな要素、 副詞や終助詞などもとりあげます。

1.日本語の文型の概観
2.名詞文
3.形容詞文
4.動詞文
5.「は」と主題
6.補語のまとめ
7.格助詞のまとめ
8.格助詞相当句
9.名詞・名詞句
10.修飾
11.副詞
12.擬音・擬態語
13.数量表現
14.形式名詞
15.指示語
16.疑問語・不定語
17.比較構文
18.副助詞
19.終助詞


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1.日本語の文型の概観

1.1 基本述語型
1.2 修飾語など
1.3 複合述語
1.4 複文・連文
[補説§1]

1.1 基本述語型
   1.1.1 名詞文  1.1.2 形容詞文  1.1.3 動詞文   1.1.4 基本述語型が表す事柄
1.2 修飾語など
   1.2.1 修飾:連体と連用  1.2.2 名詞句:名詞の拡張  1.2.3 複合述語:述語の拡張  1.2.4 単文のその他の要素:副助詞・終助詞
1.3 複合述語
   [テンス・アスペクト]  [ボイス]  [複合動詞・補助動詞]  [機能動詞・形式動詞]  [敬語]  [ムード]
1.4 複文・連文 
   [複文]    [連文]

「補説§1」
 §1.1 『基礎日本語文法』
 §1.2 『現代日本語文法』
 §1.3 『日本語文法ハンドブック』
 §1.4 『日本語のシンタクスと意味』『日本語の文法(上)』『(下)』
 §1.5 『日本語の文法(上)』『(下)』
 §1.6 『日本語の文法』(高橋太郎)
 §1.7 『文法の時間』(村田美穂子編)
 §1.8 『日本語運用文法 −文法は表現する−』(阪田雪子編著)
 §1.9 『日本語文法』(岩淵匡編著)
 §1.10 『日本語類義表現使い分け辞典』(泉原省二)



 文型を一つ一つ検討していく前に、日本語の文法の全体を一通り見渡してみたいと思います。ど んな文型があり、それぞれの文型で問題になることは何かということを見ていきます。


1.1 基本述語型

 文の中心となるのは、前に述べたように、述語です。その述語の品詞が何かによって、日本語 の基本的な文は大きく3種類に分けられます。その三つとは、「0.3 文の種類」で名前を出した「名 詞文」「形容詞文」「動詞文」で、まとめて「基本述語型」と呼ぶことにします。

これから先、しばらくの間、例文はすべて「丁寧体」(です・ます体)にします。そうするのは、その ほうが文法的に「基本的」な形だ、という意味ではありません。「丁寧体」というものは「普通体」( 丁寧体の「本です・行きます」に対して、「本だ・行く」の形を使う文体)に丁寧さを示す要素が付け 加わった形だと考えられるので、その点では「普通体」のほうがより基本的と言えます。(文体の話は「22.文 体について」でします。)
 
丁寧体   これは私の本です。   私は学校へ行きます。
普通体   これは私の本だ。    私は学校へ行く。

しかし、日本語教科書はほとんど全部が丁寧体から教えています。丁寧体のほうが、学生が 習ってすぐ実際に街で使っても、相手に失礼な感じを与えないので、問題が起きにくいからです。 日本社会では、普通体で誰にでも親しげに話し掛けるのは好ましいことではありません。

もう一つ、指導上の理由があります。丁寧体のほうが形の変化が単純で教えやすいのです。日 本人の子供にとっては、普通体の方がやさしく、丁寧体で話すのは難しいと感じるかもしれません が、日本語学習者にとっては逆なのです。この本でも、活用の細かい話は後に回したいので、変 化のかんたんな丁寧体の例文を使って「基本述語型」の話を進めます。述語の形の変化(「活用」 )の話は、第2部の「21.活用・活用形」でします。 


1.1.1 名詞文

名詞文の基本は、
の形のものです。文型として少し抽象化すると、
となります。「名詞」を「N(Noun)」で表すことにすれば、

名詞文 N は N です

となります。その否定文は「です」を「では/じゃ ありません」にします。
疑問文の作り方の基本は「か」を最後につけることです。

否定文 N は N ではありません
疑問文 N は N ですか


 名詞文の過去の形は、初級の初めでは教えないことが多いです。日常の会話ではそれほど使われな いからです。「です」の過去は「でした」、過去の否定はその「でした」を現在の否定の形の後ろに 付けます。

過去の形 N は N でした
過去否定の形 N は N ではありませんでした


 以上が名詞文の基本構造と、述語の過去・否定の形です。ここまでは日本語学習者にとっても 何ら難しいところはないのですが、「Nは」の代わりに「Nが」が使われる文型があり、その使い分 けに苦労することになります。この二つの文は、学習者の母語では区別できないことが多いからで す。
 また、「は」と「が」が一つの文にでてくる「ハ・ガ文」と呼ばれる文型があります。日本語教育では 、動詞文・形容詞文の「ハ・ガ文」はよく取り上げられるのですが、名詞文の「ハ・ガ文」は取り上げ られることの少ない文型です。
 これらの文型や、その他の名詞文の問題については、「2.名詞文」と「8.「は」について」でくわしく述 べます。
 名詞文には、その他の補語はほとんどありません。名詞文のそれぞれの名詞に修飾語がつけ られると、文が長くなります。「1.2 修飾語」以下で述べるように、いろいろな修飾語が組み合わさ れ、さらには「節」を含んだりすると、名詞文もかなり複雑な文になりますが、基本的な構造は上の 「NはNです」という単純な構造です。


1.1.2 形容詞文

形容詞にはナ形容詞とイ形容詞があります。
形容詞文の基本的な型を名詞文の場合と同じように抽象化して表すと、
 
ナ形容詞文 Nは Na です     (Na:ナ形容詞)
イ形容詞文 Nは Ai-い です   (Ai:イ形容詞)


となります。どちらも名詞文と同じような型に見えます。しかし、否定にすると、ナ形容詞文と名詞 文に対するイ形容詞文の違いが大きく見えてきます。イ形容詞の「-い」の部分は、否定にすると 変化する部分です。上の「Ai-い」という書き方は、そのことを示しています。
ナ形容詞文・否定文 Nは Na ではありません
イ形容詞文・否定文 Nは Ai-くないです   Ai-くありません


 イ形容詞は否定の形が二つあります。一つは、否定でも「です」が残っています。もう一つの否定 の形は「ありません」が付けられています。どちらも、肯定文の「-い」が「-く」に変えられています。
 次に、過去の形を見てみましょう。
 ここでも、ナ形容詞とイ形容詞とではずいぶん形が違います。

ナ形容詞文・過去 Nは Na でした
イ形容詞文・過去 Nは Ai-かったです


ナ形容詞文・過去否定 Nは Na ではありませんでした
イ形容詞文・過去否定 Nは Ai-くなかったです・Ai-くありませんでした


 ナ形容詞は以上の点では名詞と同じようなものなので、名詞と一緒にしてしまおう、という考え 方もありますが、この本では一般の文法書と同様に、別のものとします。以上のような形の違いよ りも、意味の違いと、補語のとりかたや副詞の付き方などの文法的な違いを重要だと考えるからで す。

ナ形容詞とイ形容詞は、意味的には同じ「形容詞」として非常に近いものです。そのことは、次 のような反対語・類義語の組を考えれば明らかでしょう。
それぞれの左側がイ形容詞で、右側がナ形容詞です。

反対語 類義語
きたない:きれいだ うつくしい:きれいだ
いそがしい:ひまだ やさしい:かんたんだ

形の点で、否定文や過去の言い方などが非常に違ったものになるだけで、その他の用法や意味は共通 する点が多いのですから、この二つは「形容詞」としてまとめた方がいいでしょう。
形容詞文も、名詞文と同じように基本的には主題文(「Nは」の文)です。そうでないもの(無題 文)もあります。その例を一つだけあげておきます。
形容詞文は物の状態・性質、人の感覚・感情、関係などを表わします。補語は、名詞文より多く、 特に「Nに」にいろいろな種類の補語があります。

 以上述べてきた、名詞との類似点・相違点、表す意味、無題文の形容詞文、補語などについて は、「3.形容詞文」でくわしく述べます。
 形容詞には、名詞を修飾する「連体修飾」の働きがあります。これは述語としての形容詞の働き とは少し違った、形容詞のもう一つの重要な側面です。これについても「3.形容詞文」でとりあげ ます。


1.1.3 動詞文

動詞は、述語となる三つの品詞の中で最も変化に富むもので、その文型もさまざまな種類があり ますが、動詞文の最も基本的な型は、次のように表すことができます。

動詞文    Nは/が V−ます(か) (V:動詞)
動詞文・否定    Nは/が V−ません

 また、過去は、

動詞文・過去    Nは/が V−ました
動詞文・過去否定    Nは/が V−ませんでした

となります。

 動詞文は補語の種類が多く、動詞の前にいろいろな補語をつけ加えることによってさまざまな動 詞文型が生み出されます。
 初めの名詞のところを、名詞文や形容詞文の場合のように「Nは」とせずに、「Nは/が」、つまり 「Nは」または「Nが」としたのは、動詞文では「主題文」のほかに「主題」のない文、「無題文」がご くふつうに使われるからです。
この点も、動詞文が名詞文・形容詞文と大きく違う点です。
 補語を伴った例文を少しあげておきましょう。
動詞文は、名詞文や形容詞文にくらべて、いろいろな補語(Nに/Nを/Nへ/Nと、など)をとり えます。それによって、現実の様々な事象を表わすことができます。
 それは、言いかえると、動詞文は、形容詞文などのようにある人や物のことを述べるだけでなく、 複数の人・物・場所などが関係する複雑な事象を述べることができるということです。それによって 、表現される事柄の範囲が格段に広くなるのです。そこをくわしく述べることは、文法の重要な課題 の一つです。

 さらに、名詞文や形容詞文と比べると、時の表現が細かく使われます。その事柄が瞬間的なこ とか、持続していることかという違いも表せます。
動詞文の表わす意味は、個別の動作や、習慣的な動作、将来の事柄、話し手の意志的な行動、もの・人の存在、状態・関係など、さまざまです。

「動」詞というのは、本来動きを表わすものだということでしょうが、動きだけではなく、存在や状 態・関係なども表わします。存在・状態の例は上に出した例文の最後の二つです。次の文は「関 係」の例です。 
人の意志的な行動について述べる動詞文では、「命令」や「依頼」の表現や、「意志」を積極的に 表す表現もあります。これらは名詞文や形容詞文にはないものです。また、「受身」や「やりもらい 」のような、動詞文だけに使われる「複合述語」も多く、日本語教育の観点から考えても、あるいは 日本語の文法体系という点から考えても、動詞文は大きな広がりをもつ文型です。

以上のように述べるべきことの多い動詞文の話は、「4.動詞文」でじっくり述べます。
 

1.1.4 基本述語型が表す事柄

 以上、三種類の基本述語型を概観しました。さて、それぞれが表す事柄の内容につい て、もう一度振り返ってみましょう。  まず、名詞文は、主題の名詞(句)がどういう名詞であるのか、ということを名詞述語 で解説する文です。(その名詞、あるいはその名詞によって示される物事が、どのような 「内包」と「外延」を持つものか、を示します。)  別の言い方をすれば、時の流れや物の動きなどはなく、静止した状態で、ある名詞とあ る名詞の関係を述べる文です。      私は田中です。      あれは私の車です。      サンゴは動物です。  次に、形容詞文はすでに述べたように、物事の状態、関係、人の感覚・感情などを表し ます。これらの多くは、名詞文と同じように時間の流れ、物の動きとは別のことを表しま す。      海は青いです。      学校は駅に近いです。      夏は暑いです。      私は悲しいです。  名詞文と形容詞文は、基本的に、時間の動きをとらえず、ある物の性質や状態を述べる 文です。そして、ここが大事なところですが、そのような文は「名詞+は」を文頭に置い た「主題文」になります。  名詞文は(ごく少数の例外を除いて)主題文です。形容詞文は、名詞文よりは無題文が 多くありますが、それでもやはり主題文が多数派です。  動詞文にも、物の性質や関係を表すものがありますが、それは少数です。それらは、名 詞文や形容詞文と同じように「主題文」となります。       海水は塩分を含みます。      私は英語が少しわかります。       この答えは違います。      このカーテンは壁の色とよく合います。  動詞文の多くは、基本的に「動き」を表します。その動きは、時間の中で起こります。      昨日、田中さんに会いました。      私は明日も図書館に行きます。      毎日、雨が降ります。      私は毎朝自転車で学校に行きます。  動詞文では、主題文・無題文のどちらも多く使われます。


1.2 修飾語など

 さて、以上が「基本述語型の概観」、つまり「2.名詞文」「3.形容詞文」「4.動詞文」で扱う問題 のかんたんな紹介ですが、「第1部」の後半では、その基本述語型をより複雑な内容の文に拡張 していく方法をいろいろとりあげます。

 基本述語型を拡張する方法には、二つの方向があります。
  1. 文の成分に対する修飾
  2.  文の成分自体の拡張


1.2.1 修飾:連体と連用

修飾語は、名詞を修飾する「連体修飾」と、述語を修飾する「連用修飾」の二つがあります。「は じめに」で使った例文をもう一度使いましょう。
 「その」は名詞「火事」を修飾する連体修飾です。「やってきた」も「消防車」を修飾する連体修飾 です。(ただし、こちらは「やってきた」が「節」と見なされるので「連体節」で、この文全体は「複文」 となります。)
 そして「すぐに」は述語である「消し止められた」を修飾する連用修飾です。

[連体修飾]
  連体修飾となるのは、

名詞+「の」  私の・未来の・こっちの →「9.2 NのN」 
連体詞  この・大きな・いわゆる →「10.修飾」 
形容詞  きれいな・大きい →「3.形容詞文」 
動詞  読んだ(本) →「56.連体節」 

などです。(それぞれを扱うところを右に書きました。)
 名詞文の名詞に連体修飾語がいくつも付いた例をあげます。
[連用修飾]
 連用修飾の代表的な形式は副詞です。副詞は下位分類がいろいろあります。  「擬音・擬態語」は副詞の一種です。 →「12.擬音・擬態語」 その他にも連用修飾をするものがありますが、多くは連体修飾にも使えます。
  1. 形式名詞による句      →「14.形式名詞」
  2. 数量表現       →「13.数量表現」
 「擬音・擬態語」も多くが連体修飾になります。
[指示語・疑問語]
このほかに、さまざまな品詞にまたがる語のグループを、ある特徴によってまとめた 「指示語」「疑問語」なども連体・連用修飾に使われます。連体に使われるものは連体詞、連用のものは副詞です。
  1. 指示語       →「15.指示語」
  2. 疑問語       →「16.疑問語・不定語」
   「−いう」「−ような/ように」の形は複合的な形式です。


1.2.2 名詞句:名詞の拡張

 基本述語型を拡張するもう一つの方法は、補語・述語それ自体の拡張です。まず、補語となる 名詞の拡張法は、前後に要素を付けて「名詞句」を作ることです。上の「名詞+の」や連体詞を付 ける連体修飾も名詞句を形作ります。  aは連体修飾の例です。
bは名詞の後に接辞が付いた例です。(「接辞」については「補説§0-5」を見てください。)
 cは、名詞句の構造としては前の名詞(東京・彼)が後ろの名詞(町・こと)を修飾していますが、 意味的には前の名詞のほうが中心になっていて、後の名詞のほうが従属的です。
 これらの名詞句は「5.名詞・名詞句」でとりあげます。


1.2.3 複合述語:述語の拡張

 述語の拡張は、述語に様々な要素を付けていくことで、この本では「複合述語」と呼んでいます。 複合述語は種類が多いので、「第2部 複合述語」として大きく取り扱います。次の 1.3 で例をあ げます。


1.2.4 単文のその他の要素:副助詞・終助詞

 複合述語に進む前に、単文に現れるその他の要素を見ておきます。
 副助詞は、補語に付いて、ある意味合いを加えます。「とりたて助詞」とも言います。   ほかに、「ばかり・ぐらい・ほど・など・でも・まで・さえ・こそ」などが副助詞です。それぞれの持つ「 意味合い」は「18.副助詞」で考えます。
 終助詞は文の終わりに付いて、聞き手に対する話し手の働きかけ方を示します。 →「19.終助 詞」  一部の終助詞は、文の途中に挟んで使う用法があり、「間投助詞」と呼ばれます。  副助詞と終助詞は、文が表す事柄そのものは変えず、それに何らかの意味合いを加えるもので す。その点で、事柄そのものを表す格助詞とは大きく違います。(上の副助詞の例で言えば、「彼 が彼女に本を渡した」ことはどの文でも変わりありません。終助詞の「ね」や「よ」をつけても同じで す。)



1.3 複合述語

 「第2部」で扱う事項ですが、主な複合述語を紹介しておきましょう。


[テンス・アスペクト]

 まず、時間に関する表現です。文で表される事柄の時点と、ことばを発した時点との前後関係を 表す「テンス」、その事柄の時間的性質に関する「アスペクト」があります。
  1.  テンス(過去形/現在形)  →「23.テンス」
  2.  アスペクト(継続/状態/開始/終了、など) →「24.アスペクト」

 テンスはすべての述語に必要ですが、アスペクトは動詞述語に特徴的なものです。



[ボイス]

 次に、文の事柄を誰の視点から表現するか、あるいは誰の意図によって引き起こされたと見な すか、などの表現のしかたによって、補語に付く「格助詞」が変えられることがあります。
これを「ボイス」と言います。
  1.  ボイス →「25.ボイス」
 「受身」「使役」のほか、「可能」「自発」「やりもらい」などの表現もボイスのところで扱います。  ボイスも動詞述語のみに見られる文型です。


[複合動詞・補助動詞]

 動詞を2つ組み合わせる複合動詞は、種類がたくさんあります。後に付く動詞が、前の動詞にあ る意味を付け加えるという場合が多く、どんな動詞が後に付き、どんな意味が付け加わるのかを考えます。    →「26.複合動詞」  その他、次のような表現も「複合述語」の中でとりあげます。  「−(て)みる」は「補助動詞」とし、「−にくい」は形容詞と見なされるので「補助形容詞」とします。



[機能動詞・形式動詞]

 次の例の「与える/浴びる/覚える」などは「−する/される」とほぼ同じ意味で使われるものです。(つまり、「ボイス」に似た機能を有します。) このような動詞を「機能動詞」と呼ぶことにします。また、「美しくはある」の「ある」を「形式動詞」とします。    →「28.機能動詞・形式動詞」



[敬語]

日本語には「敬語」があります。文法の中で敬語をどう扱うかにはいくつかの立場があり得ます が、この本では敬語のいくつかの形式を「複合述語」と考えて、ここで扱うことにしました。     →「29.敬語」

[ムード]

複合述語の後半は、「ムード」を表す形式を扱います。たくさんの文型があり、話し手の表現意図をさまざまに表し分けます。聞き手に対する働きかけを表すものと、述べる事柄に対するものとに大きく分けられます。
  1.  聞き手に対する働きかけなど
  2.  事柄に対する表現態度
  3. その他

以上、複合述語の主なものを紹介しました。「補語−述語」およびボイスや複合動詞などによってある事柄が描写され、それに以上のようなムードが付け加えられることによって、話し手から聞き手への情報伝達の単位である「文」が形作られます。(なお、終助詞はムードのさらに後に加えられるもので、話し手が「文」を発する際の、最後の調整的な役割を果たします。)



1.4 複文・連文

[複文]

 以上は「単文」の話でした。つまり、一つの文の中に述語が一つの文です。一つの文の中に述語が2つ以上ある文を「複文」と呼びます。複文の多くは単文の要素の拡張と考えられます。例えば、次のように対応します。

単文の要素  複文の中の節 
名詞  名詞節 
連体修飾  連体修飾節 
連用修飾  連用修飾節 

 名詞文の2つの名詞に連体修飾の節が付いた例。(→「56.連体節」) 上の文は、次の単文と基本的な部分は同じです。 動詞文の補語にも、連体修飾節が自由に付きます。  名詞文の名詞のところに「節」が入る場合。(→「57.名詞節」)  形容詞文・動詞文の補語の名詞のところに、「〜の」「〜こと」の形の「名詞節」が入った例。  連用修飾の節は、種類がいろいろあります。ごく一部の例をあげます。

 よく考えてから、答えます。 
理由  よく考えたから、わかります。 
条件  よく考えれば/考えたら、わかります。 
目的  工学を勉強するために、日本に来ました。 
様子  窓を開けて、空気を入れ替えました。 
程度  かばんに入るだけ、詰め込みました。 
並列  私たちが2階に住み、両親が1階に住みました。 

 その他の連用節なども含め、「第3部」でくわしくとりあげます。
 述語を修飾するとは言えない、次のような遊離的なものもあります。   このような例は、「55.1.3 遊離的な節」でとりあげます。

 もう一つ、「引用」に関する文型を複文で扱います。


[連文]

 連文とは文が連続したものです。ふつうの文章はみな連文です。文より大きい単位は、「ディスコース」とか「談話」とか言われることが多いのですが、この本ではそれらよりも小さい、それらの一部分であるような文の連続の中に見られる文法現象を、「連文」の問題としてとりあげます。  接続詞は、ふつうの文法書では「文」の文法の中で扱われることが多いのですが、文と文をつなぐものですから、連文の問題です。他には、主題のつながり、指示表現、「説明」の表現などが、連文でとりあげる主な問題です。







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