4.動詞文 へ §4 動詞文補説 へ文型調査の目次へ 動詞文型調査[2]へ 動詞文型調査[3]へ 動詞文型調査[4]へ 動詞文型調査[5]へ 動詞文型調査[8]へ 動詞文型調査[6]へ 動詞文型調査[7]へ 動詞文型調査[9]へ (「現代日本語文法概説」「4.動詞文」補説§4.14「動詞文型調査」)[動詞文型調査] [1]
動詞の文型を多くの動詞について調べ、かんたんに記述していきます。 参考文献などは、下の「まえがき」を読んでください。 「動詞文型調査」の[1]から[5]までは基本的な動詞を適宜選んで記述し ました。順不同です。動詞の番号は1から599まで。 続きは[8]とします。動詞の番号は907から。(作業中) [6]はより基本度が低いと考えられる動詞を五十音順にとりあげました。動詞の番号は600から906まで。 [7]は「スル動詞」を五十音順にとりあげました。(増補予定) [9]は複合動詞の例文集です。[まえがき]
これから動詞の文型を詳しく見ていこうと思います。 動詞一つ一つの文型を調べ、「4.動詞文」で立てた文型表を検討する資料とします。 資料として、 小泉他編『日本語基本動詞用法辞典』大修館書店(1989) 『計算機用日本語基本動詞辞書IPAL(Basic Verbs)』(1987) 『新明解国語辞典』 『小学館 新日本語辞典』 のほか、動詞文の補説で紹介した資料を十分に使って行きます。 動詞用法辞典を調べ、それらを比較し、問題となるところを考えていこうと思います。 資料追加 『基礎日本語辞典』(森田良行) 『明鏡国語辞典』 『岩波国語辞典』 『現代国語用例辞典』教育社 『日語動詞用法詞典』商務印書館 文型調査の目次へ1[生まれる]
基本的には、必須補語として主体のみをとる動詞 人・動物ガ 生まれる しかし、 彼は生まれた。 とは言わない。(言っても意味(情報量)がない) 新しい命が生まれた。 時を示す、示したい場合 彼は1月1日に生まれた。 時計が12時を打つときに生まれた。 この1年で3000人の子供が生まれた。 場所を示す 彼女は大阪で生まれた。 (近所の病院で) 彼女は古い商家に生まれた。(×近所の病院に →病院の娘ナライイ) 「トコロで」は単なる場所。 「トコロに」は、そこに生まれる(その後そこで育つ)ことがその人の人生に大きな 影響を与えることが暗示される。 この国/地/町/島 に生まれ、育った。 貧乏な家に生まれて苦労した。 王室/皇室 に生まれたことの幸い/不幸 経歴などを言う、少し古い言い方では単なる場所を示す 昭和四十年、神奈川県に生まれる。生後二十日で一家は東京に移転。 (神奈川県で) 人(ノ所)ニ 生まれる 弟夫婦(のところ)に子供が生まれた。 飼い猫に子猫が5匹生まれた。(飼い猫が子猫を産んだ) これも広い意味で「トコロ」と言ってよいだろう。 人(動物・卵など)カラ生まれる 気の強い母親から生まれた娘 私は、この母のおなかから生まれてきたのだ。 桃から生まれた桃太郎 かぼそいヒナが小さな卵から生まれた。 この小さな虫たちはどこから生まれてくるのだろうか。 結果の「ニ」 女に生まれて得したこと、損したこと いい男に生まれてよかった こんな顔に生まれたかった 「いい男に生まれ」 http://www.google.co.jp/search?q=%22%82%A2%82%A2%92j%82%C9%90%B6%82%DC%82%EA%22&as_filetype=&q=&num=100&ie=Shift_JIS&inlang=ja 「顔に生まれ」 http://www.google.co.jp/search?q=%22%E9%A1%94%E3%81%AB%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%22&num=100&hl=ja&inlang=ja&start=900&sa=N 「として」 有名な指揮者の息子として生まれた。 貧乏子沢山の家の末っ子として生まれた。 生物以外が生まれる 新しいアイデアが生まれる 新製品が 新星が 革命政府が 新たな社会が 革命的な学説が 地動説が 二人の間に恋が生まれ、育つ 愛が 友情が 信頼関係が 人々の心の中に、悪が生まれる 疑いが 信頼が 希望が 疑問が 「うまれる」は、形の上では「うむ」の受身形に当たるが、その文型にはならない。 母が子を産む ×子が母に(よって)生まれる 子が母から生まれる (しかし、「うむ」にはニ格はない) 複合動詞 生まれ合わせる 生まれ変わる 生まれつく 生まれ落ちる 生まれ出る 生まれ来る IPALはデ格をたてる 帝王切開で 人工授精で 革命で新政権が 首相の急死で新内閣が 彼の努力で傑作が2[産む・生む]
基本的に 人・動物ガ 子・卵ヲ 産む 場所 デ格とニ格 病院で産むか、自宅で産むか 産む行為をする場所 土の中に卵を産む 産んだ後、卵が存在する場所 人の場合、このニ格は不可能か 他のものを作り出す 名曲を 利息を うわさを 不注意が事故を 努力が天才を よい結果を 時代が英雄を 政治家を 誤解を 結果のニ格 かわいい顔に産んであげられなくて、ゴメン。 もっといい顔に産んでほしかった。 「顔に産んで」 http://www.google.co.jp/search?num=100&hl=ja&inlang=ja&q=%22%E9%A1%94%E3%81%AB%E7%94%A3%E3%82%93%E3%81%A7%22&lr= 間接受身? 嫁に女の子ばかり産まれて弱っている (小泉) 複合動詞 産み落とす 生み出す 産み付ける(ヲ・ニ) キャベツの葉に卵を 文型調査の目次へ3[生きる]
基本的な文型は、 人・動物・植物ガ 生きる という必須補語を一つだけとる文型の動詞。 期間を表す補語をつける 日本人は、平均80年ぐらい生きる。 その終わりを「マデ」で示す 祖母は百歳まで生きた。 生きる時代を示す 時代に 我々は現代に生きている 恐竜はジュラ紀に生きていた 時代を 書き言葉・思い入れ 現代を生きる 二十世紀を 長い人生を生きていく/きた 激動の時代を 生きるところを示す 海辺に生きる生物 草原 南極 海辺で この町に生きる 人々の中で 人が 学問(一筋)に 苦難に 夢に 夢を生きる 思い出に生きる さまざまなものが 母の笑顔は今も私の胸に生きている 心に生きる言葉 この法律はまだ生きている 苦心・経験が作品に生きている 素材が生きる 文章が生きている 筆が生きている 複合動詞 生き返る 生き長らえる 生き抜くヲ 生き残る 生き延びる4[生かす]
基本の文型は 人ガ 人・動物ヲ 生かす で、「生き続けさせる(殺さない)」の意味になる。 釣った魚を生かしておく (IPAL) やつは殺すな。もう少し生かしておけ。 (小泉辞典では、「生き返らせる」を最初にあげているが、その例文は不自 然に感じられる。「その若者はおぼれて死にかけている人を人工呼吸で生か した」「死者[枯木]を生かすことはできない」) 実際に多い使用例は、「モノ・コトを生かす(活かす)」という用法 ニ格で目的・用途が示される 「ニ・ヲ」か「ヲ・ニ」か デ格との違いは何か 仕事に才能を生かす 仕事で 個性・アイデア・経験・持ち味・チャンス・教訓 調べた資料を論文に生かす 体験を演技に生かす 出された意見を次回の議論に生かす 長所・特性・特徴 創意工夫・学問・反省 忠告・意見 機会 予算 時間 余暇 脇役が主役を 調理法が素材のうまみ/味を 演出が俳優の持ち味を 「生きる」と「生かされる」 ここに彼女の個性/体験/工夫が生きている ここに彼女の個性/体験/工夫が生かされている 類語 他人の才能を生かす 活用する 自分の才能を生かす 発揮する 文型調査の目次へ5[はたらく]
基本的な文型は、主体のみを補語として 人ガ 働く 副詞や時間が付く よく働く ぜんぜん働かない ほんの少し働く 毎日8時間働く ところデ/ニ 会社で働く 下請工場に働く労働者 連体が多い 「工場に働いています」という叙述用法では少ない ニ格 ある種の「力」を持つものがある対象に強く影響する その対象をニ格で表す 引力が物体に働く ボールに遠心力が働く 胃に働く薬 頭が働く 知恵 悪知恵 理性 群集心理 競争心 カン お前って、こういうことには悪知恵が働くんだよな、まったく。 母子共々、こういうのを見つけることにカンが働くのかもしれない。 〜という心理が働く 集団心理が悪いほうに働くと、こういう事件が起きる このニ格は「方向」を表すか(集団心理が個人に働く) ヲ格 なぜか悪いことばかり 悪事 詐欺 強盗 狼藉 不正 盗み ストーカー行為 暴行 すり 無礼 ニ格をとりうる 目上に無礼を働くとはなんということだ 「に無礼を働く」 http://www.google.co.jp/search?q=%22%E3%81%AB%E7%84%A1%E7%A4%BC%E3%82%92%E5%83%8D%E3%81%8F%22&num=100&hl=ja&inlang=ja&start=400&sa=N 文型調査の目次へ6[休む]
[やすむ] 基本的文型は 人ガ 休む 場所 デ 木陰で休む ここらでちょっと休もう。 ニ格 ベッドに休む 木陰に休む 「ベッドに休み」 http://www.google.co.jp/search?num=100&hl=ja&inlang=ja&q=%22%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%89%E3%81%AB%E4%BC%91%E3%81%BF%22&lr= 対象ヲ 人ガ ものヲ 休む 仕事を 会社 学校 店 営業 体育 プール 練習 勉強 授業 忘年会 日記 サイトの更新 期間 正月を休む 人生を休む 自分の立場(を離れる) 大人を 女を 複文 ノ/コトを休む 仕事に行くのを休む 道場に行くのを ご飯を作るのを 頭を使うのを 右手を使うのを 走るのを 書くのを7[休める]
人ガ ものヲ 休める 頭 目 神経 足 体 腰 心 気? 仕事の中断 はし ペン 仕事の手を休める エンジンを休める 機械 「人ガ 人ヲ 休める」とはあまり言わないこと 「休ませる」 兵を休める 選手を休める しかし、「課長が課員を休める」とは普通言わない(だろう) 「兵・選手」は「手駒」の意味合いがある。 ニ格 〜に目を休める 「緑に目を休め」 http://www.google.co.jp/search?num=100&hl=ja&inlang=ja&q=%22%E7%B7%91%E3%81%AB%E7%9B%AE%E3%82%92%E4%BC%91%E3%82%81%22&lr= 文型調査の目次へ8[遊ぶ]
人ガ 遊ぶ 勉強・仕事をせずに遊ぶ 毎日遊んでいる 道具 おもちゃで ゲームで 所 部屋で 外で 庭・公園・道・ゲームセンター 「東京に遊ぶ」のニ格は古い用法 人と 必須格でないが頻度が高い 友達と 仲間・兄弟・クラスメート・子ども・犬 物が 土地・資金が遊んでいる 使役の形でよく言う 土地を遊ばせている ヲ格 ゲームを遊ぶ 最近の用法? 盆栽を遊ぶ 雑誌などでよく使われる用法 東京を遊ぶ 受身? 人ガ 人ニ 遊ばれる 将棋部の先輩と一局対戦してみたが、軽く遊ばれてしまった。 あの子、お金持ちとつき合っているって言うけど、遊ばれてるだけじゃない? 複合動詞 遊びまわる 遊び飽きる 遊び暮らす9[暮らす]
基本の文型 人ガ 暮らす 所デ/ニ 都会で暮らす 都会に暮らす 静かな田舎に暮らす ヲ格 時間 毎日をなんとか暮らしていく 孤島で1か月暮らす 様子 楽しく暮らす のんびり ゆったり 漫然と 遊んで暮らす 借金取りから逃げ回って暮らす毎日 安月給で暮らす 1万円で暮らす10[生活する]
人ガ 生活する 都会で生活する 都会に? 安月給で 毎月5万円で生活していく 日々を生活していく 田舎で3か月生活する 参考:研究社 類義語使い分け辞典 文型調査の目次へ11[寝る]
人・動物ガ 寝る 所デ/ニ 家で 部屋で 会社で ソファー・畳で (眠る) ソファー・畳に (横になる) おおよその傾向として「で」は眠る時に、「に」は横になるだけの時に 使われるようだ。 イスで寝てしまう ?イスに寝てしまう 電車で寝ておく ?電車に ホテルで寝ると、どうも熟睡できない。 ?ホテルに 病気で 調子が悪くて3日間寝ていた。 ?寝た 3時に寝る 3時間寝る・寝ている ものガ 髪の毛が寝ている 複合動詞 寝過ごす 寝込む 寝転ぶ 寝静まる 寝そびれる 寝つく 寝たりない 寝つけない12[眠る]
人・動物ガ 眠る 所デ 部屋で ベッドで 所ニ へやに・ベッドに眠る 墓に眠る ここに眠る (死んで) 手段で 睡眠薬で 注射で (「寝る」は使いにくいか) 物が 砂漠に石油が眠っている 海底に資源が タンスに着物が 最新の機器が使われないまま倉庫に眠っている 彼女の才能はまだ眠っている 複合動詞 眠り込む 眠りこける 文型調査の目次へ12[育つ]
基本的な文型は主体のみ 人・動物・植物ガ 育つ しかし、 彼女は育った。 では不十分。 彼女は都会で育った。 彼女は無事に育った。 彼女は健康に育った。 彼女は大きく育った。 場所のニ格 都会に育つ ニのほうが書き言葉 都会で育つ 「すくすくと」のような副詞を入れる場合、「ニ」は使いにくい。 田舎ですくすくと育った。 ?田舎にすくすくと育った。 結果のニ格 立派な大人に育つ 一人前に 優しい娘に (天才少年が)立派な音楽家に育つ 音楽家が育つ 結果の名詞 お湯が沸く? 後継者が育たない カラ格 この学校から多くの音楽家が育った。 この学校で多くの音楽家が育った。13[育てる]
人ガ 人・動物・植物ヲ 育てる 子供を育てる ヒナを 捨て猫を 草花を 種から 苗を 後継者を 技術者 一流選手 音楽家 研究者 ニ格 息子を立派な男に育てる 学生を一人前の研究者に育てる 「育つ」との対応 (この赤ん坊を)心の優しい子に育てたい 心の優しい子を育てたい ものヲ 小さな工場を大企業に育て上げた。 子供の才能を育てる 夢を センスを 愛を 心を 小さなアイデアを売れる商品にまで育てる (育て上げる) 複合動詞 育て上げる 文型調査の目次へ14[泣く]
人ガ 泣く 子供が大粒の涙を流して泣いている。 ゆりかごで赤ん坊が元気よく泣いている。 泣く子は育つ 副詞(擬態語)が多い わあわあ(と) しくしく、めそめそ、おいおい、わんわん 比喩的に ここは泣いてもらおう。 彼の無理難題にはいつも泣かされる (小学館) 原因のニ格 ただし比喩的用法 ケガに泣くスポーツ選手は多い。 1点差に泣いた。 一円を笑う者は一円に泣く 雨に泣く 円高に泣く えん罪に 汚名 悲運 悪天候 失投 エラー 原因の表し方 子供がひざをすりむいて、泣いている。 ひざが痛いので、泣いている。 ひざが痛くて、泣いている。 けがの痛みで泣いている。 (あまり言わない?) けがの痛みに泣いている。 (小説の文体?) 物ガ 一流企業の名前が泣く 老舗ののれんが 看板が 複合動詞 泣き明かす 泣き落とす 泣き崩れる 泣き暮らす 泣きじゃくる 泣きつく 泣き伏す 泣き叫ぶ 泣き別れる15[鳴く]
動物ガ 鳴く 鳥・けもの・犬・猫・馬・牛・ニワトリ・ひよこ・鳩・カラス 虫 腹の虫 所デ/ニ 草の陰で鈴虫が鳴いている。 庭に鳴く虫の声を聞いていると、秋を感じる。 動物の鳴き声を表す擬音語が多い16[笑う]
人ガ 笑う 大口を開けて笑う 口の隅でちょっと笑った にこにこしているようだが、目が笑っていない。 副詞(擬態語・擬声語)が多い にこにこ・にっこり・にやにや・にたにた・くすくす・げらげら 「あははは」/「えへへ」 と笑う デ格 落語で笑う ギャグで 物まねで ジョークで 下ネタで笑ってしまったとき、ちょっと周りの目が気になる。 ニ格 あまりのばかばかしさに、思わず笑ってしまった。 あいつちょっと困った顔に、にんまり笑ってしまった。 寄りかかった松の木が倒れたギャグには笑ったね。 名詞節ノ+ニ 課長があわてて言い訳するのには笑ってしまった。 猫が赤ん坊に抱きつかれて逃げ出したのには笑ったね。 物まねが思ったより似ていたのに笑った。 ヲ格 人のことを笑ってはいけない。 人の失敗を バカさ加減を スタイルの奇妙さを 人の不幸を 貧しさを 常識のなさを つまづいて転んだのを 素知らぬ顔をしているが、腹の中では笑っているんだろう。 (私のことを) 受身 人に笑われる バカなことを言って、みんなに笑われた。 慣用表現 鼻で笑う ひざが笑う 複合動詞 わらいこける 笑い転げる 笑いさざめく 笑い飛ばす 文型調査の目次へ17[死ぬ]
人・動物ガ 死ぬ この木ももうすぐ死ぬ 森が死ぬ (植物が枯れる) 星が生まれ、死ぬ 神は死んだ 原因デ 病気で ガン 肺炎 心臓病 事故で 地震 洪水 戦争 場所デ/ニ 病院で 畳の上で 戦場で 海で ニ格 海に生き、海に死んだ (少ない) 道に猫が死んでいる ベニスに死す 年齢デ 80歳で 3才で (限度) 部分 細胞組織が死んでしまう 比喩的に 目が死んでいる 生気がない 文章が死んでいる 死んだような町 類語 亡くなる 亡くす 複合動詞 死に急ぐ 死に絶える 死に別れる 慣用表現 死にそうだ 死ぬほど〜 死んでも死に切れない[亡くなる]
人ガ 亡くなる 私は亡くなった父にだんだん似て来たそうです。 「死ぬ」の基本用法にほぼ同じ[亡くす]
人ガ 人ヲ 亡くす 彼は5才の時に父を亡くした。18[病む]
人ガ 病む 彼は心が病んでいる 神経が 心身が 精神が 彼は心を病んでいる 肺・胸・胃・神経 気に病む そのことをいつまでも気に病んでいた そのことで 比喩的に 現代社会は病んでいる 世の中どこかが病んでいる アメリカは病んでいる この国は 日本全体が コミュニティが 文明全体が 医療自体が 患者が病んでいるのか、医者が病んでいるのか、医療従事者が病んで いるのか 類義表現 「病む」は書きことば ふつうは、「病気だ/になる/にかかっている」などを使う 彼は肺の病気だ/にかかっている あるいは、「わずらう」 彼は肺をわずらっている。 文型調査の目次へ19[生える]
所ニ 物ガ 生える 植物・草・木・カビ・雑草・キノコ・とげ 毛・髪・歯・ヒゲ・角・牙・羽根 庭に雑草が生えて困る。 口の周りにヒゲが生えてきた。 茎にとげが生えている。 人・動物ニ 物ガ 生える 赤ん坊に歯が生えてきた。 オタマジャクシに足が生えてきた。 所/物カラ 土の中から芽が生えてきた。 種から芽が生える 種に? ジャガイモから/に 芽が生える 球根から/に 根が生える 土から/に草が生える (×庭から雑草が生える) 赤ん坊の口に歯が 赤ん坊の口から歯が ? 赤ん坊の歯茎から歯が まさにその場所から 複合動詞 歯が生えそろう 生え替わる ▽小泉辞典は「〜は〜が」文型を立てる。 象は牙が生えている 「象に→象には→象は」だろう 彼は胸に毛が生えている 「彼の胸に」から「彼」の主題化20[生やす]
人・動物ガ 所ニ ものヲ 生やす 庭に芝生を生やす (植える) 庭に雑草を生やしてしまった あごにひげを生やす 胸毛を生やしている シカは角を生やしている 頭に二本の角を生やした鬼21[咲く]
花ガ 咲く バラ(の花)が咲いた 所デ/ニ うちの庭で梅の花が咲いたので、おいでください。 ニ格のほうが多いか 庭に咲く 山に 海辺に 花壇に 枝の先に小さな花が 梅の木に花が咲いた (?梅の木で) 使役 人が(枯れ木に)花を咲かせる 花咲じいさん 木が花を咲かせる 比喩的に 空に咲く星 打ち上げ花火が空に大輪の花を咲かせた 人が花を咲かせる 一花咲かせる 才能が花を咲かせる 才能が花咲く 命令? 花よ、咲け! 複合動詞 咲きかける 書きこぼれる 咲き乱れる 咲きにおう 咲き残る 咲き誇る 慣用表現 〜の話に花が咲く 学生のころの話に花が咲いた。 自慢話に花を咲かせる 死んで花実が咲くものか 文型調査の目次へ22[かれる]
ものガ かれる 「水分がなくなる」という意味の共通性 漢字表記の違い 植物ガ 枯れる 葉・花 草 木 松 井戸・池などが かれる (涸れる) 水のくみ上げすぎで井戸が涸れてしまった 日照りで湖の水が 涙が 石油が のど/声が かれる (嗄れる) 比喩的に 枯れた味わい プラスイメージ 枯れた字 人柄が枯れてきた 才能がかれる 愛情・情熱・アイデア・イメージ 創作力・想像力 エネルギー 彼女は絵に対する情熱がかれてしまったようだ。 資金がかれる 複合動詞 かれはてる 枯れきった味わい23[からす]
人ガ 植物などヲ 枯らす 水やりを忘れ、花を枯らしてしまった。 除草剤を使って雑草を枯らした。 地下水をくみ上げすぎて、井戸をからしたのは彼らだ。 運動会の応援のしすぎで声をからしてしまった。 注文のままに書きまくり、小説家としての才能をからしてしまった。 かれさせる 彼女の才能をかれさせてしまったのは、夫である彼のわがままだった。 文型調査の目次へ24[光る]
ものガ 光る ビルの屋上で大きなネオンの文字が光っていた。 朝露が日の光を受けてキラキラと光っている。 きらきら(と) きらっと きらりと ぎらぎら(と) ぎらっと ぎらりと ぴかぴか(と) ぴかっと ぴかりと 所デ/ニ 闇の奥で、何かが光った。 遠くで/に 船の明かりがいくつも光っている。 彼女の指に光るダイヤの指輪を見ていた。 夜空に光る星 中天に月が青白く光っていた。 僕の行くところへついておいでよ 夜空にはあんなに星が光る (加山雄三) 目に光る涙 (×目で) 人ガ 3人の中では、バッハを演奏した小林さんがだんぜん光っていた。 彼は、何か光るものを持っているね。 彼女の演技が 美しさが 彼の存在感が 複合動詞 光り輝く 慣用表現 建物の中は、どこでも監視/警備 の目が光っていた。 警備員が目を光らせていた。 アスペクトの問題 光った → 光っている (生えた → 生えている) 光っている → 光った (降っている → 降った) のどちらでもない。 光っている → 光っていた ? (カガヤク、テルでも同じか。)25[輝く]
ものガ 輝く 太陽・月・星・電灯・明かり・ネオン・ダイヤ・宝石 ぴかぴか(と) ぎらぎら(と) きらきら(と) 所デ/ニ 頭の真上で/真上に 太陽が輝いている。 夜空に輝く星 「空で輝く」より「空に輝く」が圧倒的に多い(google) テーブルの上で山のような宝石が輝いていた キラキラと輝く金貨 薄暗い中で輝く彼女の瞳 美しく/あやしく 彼女の業績は、研究史上、大きく輝いている デ/ニ? 研究史の中で ものガ もの(光)デ/ニ 輝く 木の葉が/真っ白な雪が 太陽の光で/に 輝いている 真っ白に 雲が朝日に 新しい机はぴかぴかに輝いていた。 人のものガ 感情ニ 輝く 目/顔が 喜びに輝く 希望に輝く 目を輝かせて 人・組織ガ 賞などニ 輝く NGOが平和賞に輝いた 新人賞/優勝に輝く 〜の栄誉に輝く 人ガ 彼女は今、いちばん輝いている 文型調査の目次へ26[照る]
ものガ 照る 太陽・月が照る こうこうと さんさんと 光・ライト・明かりが照る ぎらぎらと 所ニ 庭に月の光が照っている。 砂浜に照る太陽 (太陽が照らす所) 雲一つ無い空に照る太陽 (太陽の位置) 所デ/カラ 私の目の前で照るライトがまぶしかった 私の頭の真上から照る太陽が熱かった 頭の上で照っている 複合動詞 照り返す 照り込む 照りつける 照り映える27[照らす]
人ガ (ものデ) ものヲ 船が 懐中電灯で道を照らす ライトで主役を照らす こうこうと 人ガ 道具ヲ ライトを照らす 下から 〜ニ向けて ものガ ものヲ ライトが辺りを照らす 強い光が 街灯が横断歩道を照らしている 太陽は世界を 月が小さな町の暮らしを 宇宙の真理が世界を照らす 神の教えが ものニ ものヲ (ものニ対して) この世に光を照らす 闇に 人生に 物体に 〜の上に 「に光を」の例は多い ライトを辺りに照らす 「辺りに照らす」は「辺りを照らす」に比べ非常に少ない 部屋の奥にライトで光を照らす 複合動詞 照らし出す 照らしつける 慣用表現 法律/規則/前例 に照らして 文型調査の目次へ28[降る]
雨・雪などガ 降る 雨が降っている。 ぽつぽつ しとしと ざあざあ 雪が静かに降り続く。 ちらちら しんしんと 火山が噴火して、灰が降ってきた。 ぱらぱら ばらばら さあっと 空カラ 遠い、遠い、空のかなたから、白い結晶が降ってくる。 大きな竜巻の後は、空からいろいろな物が降ってくるそうだ。 空襲の時、空から爆弾がばらばらと降ってきて、生きた心地がしなかった。 所デ/ニ 関東地方では午後から降り出すでしょう。 都会に降る雨は冷たく、田畑に降る雨はやさしい。 山に降った雪が溶けるまで、あと5か月はかかります。 私の上に降る雪は真綿のようでありました (中原中也) 複合動詞 降り積もる 降りかかる 降り止む 文型調査の目次へ29[吹く]
風ガ 吹く 所ヲ 草原を 水面を 上空を強い風が そよそよ ひゅうひゅう 木々の間を ぴゅうぴゅう びゅうびゅう 体の中を風が吹く 風がほおを吹く 快い風に吹かれて散歩する (「風が私を/に 吹く」?) 強い風に吹かれて木の葉/ゴミ が舞い上がる 人ガ ものヲ 吹く 笛を 尺八を 口笛を (所デ) フルートで小曲を 「蛍の光」を 息を吹く ローソクの火を(息を)吹いて消す ふっと ふうっと 「火を吹く」ではなく、「火を消す」だろう 熱いコーヒーを吹いて冷ます これも同じ 息を吹いて (この2例は小泉辞典) 複合動詞 吹きすさぶ 拭きすぎる 吹き付ける 吹き飛ばす 吹き抜ける 吹き寄せる 慣用表現 ほらを吹く30[止む]
文型としては単純 ものガ やむ 雨・風・雪・嵐・風雨・雷・地震・ゆれ ぴたりと止む 音・声・音楽 ヤジ・非難 母の怒りがやむのを待って、 夜泣きが 問題行動が 症状が 頭痛が 耳鳴りが 幻覚が 怒号が ヤジが 攻撃が 砲火が 爆撃が 攻撃の手が 災害がやんだ日から 事情・理由・原因が (法律の文章で使われる用法のようだ) 文型調査の目次へ31[晴れる]
ものガ 晴れる 空・雲・霧が晴れる 東京地方は今晩晴れるでしょう。 空が? 東京が晴れる? 昨日はよく晴れた。 空が? 富士山の頂上はよく晴れています。 気持ちが晴れる 心・気 疑いが晴れる 嫌疑・疑惑 複合動詞 晴れ上がる 晴れ渡る32[曇る]
基本的文型は 空ガ 曇る 空が曇った日は、気持ちも晴れない。 特に「空」を言わないことが多い 今日は一日中曇っていた。 少し曇ってきたよ。 午前中は晴れますが、午後から曇るでしょう。 東京地方は今晩から曇るでしょう。 物ガ 原因のデ格 窓(のガラス)が蒸気で曇る 熱いお茶を飲むと、めがねのレンズが湯気で曇ってしまう。 人の〜ガ 彼女の声は涙で曇っていた 顔・表情・心・気持 原因のニ格 その知らせに、母の顔が一瞬曇った。 (小泉辞典例) 文型調査の目次へ33[乾く]
水・水分ガ 乾く さっき校庭にまいた水がもう乾いてしまった。 汗・涙が乾く ものガ 乾く さっき水をまいた校庭がもう乾いてしまった。 絵の具が乾く 血が乾く 土・地面・洗濯物が 乾いている 空気が乾いている 乾いた布でよく拭いたほうがいい 乾ききった地面 のどが渇く 目が乾く 口・舌・唇・鼻 人ガ ものニ 温かい人間関係に渇いている 愛情に渇く 心が渇く34[乾かす]
人ガ ものヲ 乾かす ハンカチを乾かす 器具についた水をよく乾かしてから使ってください 汗を乾かす 手段で ドライヤーで髪を乾かす 乾燥機で洗濯物を乾かす 熱風で手を乾かす 天日でのりを乾かす 太陽の光で乾かす 太陽の光に乾かす 言えるか? 熱で乾かす ?熱に乾かす 洗濯物を乾かした → すっかり乾いた35[干す]
人ガ ものヲ 所ニ 干す 物干しに洗濯物を干す 屋上に 軒下に 室内に ベランダで布団を干す 毛布・シーツ・座布団 日陰で/に 干す 革靴を 柿・大根・海苔・昆布・魚・イカ 人ガ ものヲ 日ニ 干す ふとんを 本を 衣類を 酒・ビールを干す 杯・コップを干す プールの水を干す 池を干す 人ヲ 干す 彼は上役に逆らったため、今(仕事を)干されている。 役を干される IPAL 所カラ 池から水を干した ドブから水を 文型調査の目次へ36[ぬれる]
ものガ 液体デ/ニ ぬれる 洗濯物が雨で/に ぬれてしまった。 服・自転車・葉・草・道・屋根が ぬれる 雨に濡れた歩道を歩く 夜露に濡れた草 コップが倒れて、テーブル/本がぬれてしまった。 頭・髪・身体 汗でぬれたシャツ/ハンカチ 窓ガラスが湯気でぬれている 水にぬれた手で触らないでください。危険です。 涙にぬれた瞳37[ぬらす]
液体ガ ものヲ ぬらす 雨が木の葉をぬらしている。 噴水が風に吹かれて歩道をぬらしている。 涙が頬をぬらす 人ガ ものデ ものヲ 子どもが服を池の水で濡らしてしまった。 切手を水にぬらす 水でぬらす 幼児がおしめ・パンツを38[凍る]
ものガ 凍る 池の水が凍る 庭の池が凍った。 池の表面が 岸に近いところから凍った 水道(管)が凍って水が出ない。 水道管の中の水が 枕元で植木鉢の水分が凍っていた。 道(の表面)が凍っていた。 氷が凍る 「水が湧く:湯が沸く」の対と同じか 冷蔵庫の氷、凍ってる? 硬く凍っていたアイスキャンディーが溶けてきた。 温度デ 水は0度で凍る。海水はもっと低い温度で凍り始める。 文型調査の目次へ39[冷える]
ものガ 冷える 部屋の空気はすっかり冷えていた。 建物・部屋・床・壁 冷え切った体を温泉で温める。 背中・おなか・腹・手・足・指 冷えたスイカ/果物 はおいしいね。 エンジンが冷えてしまって、なかなかかからない。 大気の状態 今日は冷えるでしょう。 今夜・明け方 特に内陸部はいっそう冷える。 比喩的に 二人の関係は冷え切っている。 愛情・仲・気持 消費が冷える 景気 原因のデ格 不用意な一言で夫婦の愛情が冷えてしまった。 増税で国内消費が一気に冷えた。 ニ格 冷蔵庫にビールが冷えているよ。 (〜テイルの形で) 意志形の用法がない 冷えようが冷えまいが40[冷やす]
人ガ ものヲ 冷やす エンジンを冷やす すいかを ビールを冷やしておく からだを 投手は肩を冷やさないように 手足を 患部を はれた所を ひたいをタオルで 首を 頭を冷やす ものガ 夕立が熱せられた地面を冷やした ファンがモーターを冷やしている 手段 冷蔵庫で 冷却水で エアコンで 氷で 水で 湿布で 結果のニ格 水を15度に冷やす ビールは何度に冷やすと一番美味しく飲めるか 慣用表現 頭を冷やす きもを冷やす 文型調査の目次へ41[あたたまる]
ものガ 温まる・暖まる 体・手・足・腰・おなか 心が 心温まる話 料理が 部屋 いす 空気 海(の水)が温まる 地球が スープを飲んだら、おなかが温まった。 温泉に入って温まろう。 (意志表現が言える) cf. 涼む 手段デ/ニ 火で ストーブで こたつ 日光で お風呂で 温泉で ストーブ/暖炉/お風呂 に温まる 結果のニ格 部屋の中は28度に温まっている42[あたためる]
人・動物・ものガ ものヲ 暖める・温める 人が 料理を 味噌汁を ごはんを 部屋を 床を 動物が体を 手・足・指・腰・肩を めんどりが卵を ものガ 日光が大地を ベンチを 赤外線が体の芯まで温めます 手段デ エアコンで部屋を 電子レンジで残り物を 結果のニ格 80度に/まで 温める 慣用表現 旧交を ベンチを43[熱する]
人・ものガ ものヲ 熱する ガスでフライパンを熱する 太陽の光がアスファルトを熱している ニ格 油を180度に熱してください。 受身形:熱せられる 文型調査の目次へ44[鳴る]
ものガ 鳴る ベル チャイム 鐘 雷 時報 目覚まし サイレン 楽器 太鼓 ピアノ 鈴 風鈴 ネコののど 音 頭の中で音が鳴っている 落ち葉が風に吹かれて、かさかさと鳴った 拍手が鳴り続いている 所デ 枕元で目覚ましが鳴っている 近所のお寺で除夜の鐘が鳴る 所ニ 詩語? 晴れた美空に靴が鳴る お聞き遙かな空に鐘が鳴る 慣用表現 腕が鳴る 複合動詞 鳴り渡る 鳴り響く 鳴りやまない45[鳴らす]
人・動物ガ ものヲ ベル チャイム 鐘 目覚まし サイレン ブザー 車のクラクション 楽器 太鼓 ピアノ 鈴 指 ネコがのどを 大きな音を 慣用表現 社会に警鐘を鳴らす 不平を鳴らす 名選手として鳴らしたものだ46[ひびく]
音ガ 所ニ 響く 鐘の音が辺り/夕空/空腹 に響いた。 大砲の音が響く 四番打者の不振が大きく響いた。 値上げが売り上げに響く 文型調査の目次へ47[明ける]
ものガ 明ける 夜・朝・年・一年 梅雨が明ける 東の空から明けてきた (つゆは)南の方から明けてきた48[明かす]
人ガ 夜を 明かす 年を (「人が秘密を明かす」の類は別項目とする)49[暮れる]
ものガ 暮れる 日が暮れた。 今年も 春が 今年の秋も暮れていく。 慣用表現 人ガ ものニ 暮れる 思案・途方に暮れる 悲しみに暮れる 涙に暮れる50[経つ]
時間が たつ それから、三日の時間が経った。 それから、(時間が)三日経った。 それから、三日が経った。 ガ格または数量詞・副詞などがなければならない 時間が経つにつれ、 10分経った。 しばらく/いくらか/少し 経ってから、 それだけ経てば、彼の気持ちも落ち着くだろう。 〜してから 〜するまでに 2時間経った。 〜しているうちに 3年の月日が経った。51[過ぎる]
時間が 過ぎる 1年/10分 が過ぎた。 時が過ぎれば、すべてが変わる。 何事もなく、その時刻が過ぎた。 (「ものが(所を)過ぎる」は別項目とする) 文型調査の目次へ52◇[擬態語+する]
擬態語には「する」がついて動詞となるものがかなりある。 その中で主体のみをとるものをいくつかあげておく。 既出の意味範囲のもの 笑う にこにこしている にっこりする にやにやする 泣く めそめそするな 眠る うとうとしてしまった うつらうつらしていた 光る 目がきらきらしている ぎらぎらしている 人の心理 何だかわくわく/いらいら する はらはらするね。 気分がくしゃくしゃする うんざりした。 人の態度・様子 彼はうきうき/むっつり/うっとり/げっそり/ぐったり/ぴりぴり している くよくよ/しょんぼり/おどおど/びくびく するな きょろきょろ/そわそわ/うずうず/せかせか/のろのろ している よろよろ/まごまご/うろうろ/ごろごろ/じっと している ぼやぼや/だらだら/ぺこぺこ/こそこそ/ぐずぐず/どたばた するな 性格がさっぱりしている 傷・体調など 傷がずきずきする 舌がぴりぴりする 胸がむかむか/どきどき する ▽「擬態語+する」を一つの動詞あつかいするか、「副詞+する」の2語と見るか。 「と」が入った場合は副詞と考える。 彼女はにっこりとした。 私はうとうととしていた。 ただし、この場合も「にっこりと」は必須要素である。 ?彼女はした。 したがって、文型としては「人ガ 副詞的要素+する」となる。 「漢語名詞+する」の場合、一つの動詞と見るのが一般的だろう。 彼女は勉強している。 人ガ 勉強する 彼女は勉強をしている。 人ガ ものヲ する 副詞の場合もそれと同じ扱いでよいか。 ものの状態 台がぐらぐらする 頭がふらふらする 木の実がゆらゆらしている 蓑虫がぶらぶらしている 土台部分がしっかり/がっしり/がっちり/どっしり している 机の表面がすべすべ/がさがさ/ざらざら/でこぼこ/ぎざぎざ している 地面がじめじめ/どろどろ している 肌がかさかさ/つやつや している コップがつるつる/ぬるぬる する ナベが油でねばねば/べたべた する 靴がぶかぶかしている 画像がはっきり/くっきり/ぼんやり している 日だまりはぽかぽかしている この砂はとてもさらさらしている あたりはひっそり/ざわざわ/がやがや している ゆきがちらちらしている リボンがひらひらしている パンがふわふわしている ▽「する/している」 「する」で状態を表せるものと、「している」で「結果の状態」を表すものがある。 油で表面がべとべとする/している (アスペクトの対立がない) 油でべとべとする/している/した 表面 問題がはっきりする → 問題ははっきりしている(結果の状態) はっきりした/している 問題 ×はっきりする問題 文型調査の目次へ ◇2価動詞 主体以外に対象をとる動詞をとりあげます。人間の日常生活の中の動作から。 まず、衣食住関係の動詞を。53[かぶる]
人ガ ものヲ 頭に 帽子・かつら・冠・ヘルメット 頂上に雪をかぶった冬山 顔に お面・仮面 野球のマスク 頭から 水・お湯 灰・ほこり ふとん・もうふ・タオル を頭からかぶる 船が 波をかぶる 抽象的なもの 責任を 損失を 罪をかぶる 慣用表現 泥をかぶる 猫をかぶる54[かぶせる]
人ガ ものニ ものヲ 料理にふきんをかぶせる パソコンにカバーをかぶせて運ぶ 種をまいてその上に少し土をかぶせておく 人形の頭にかわいい帽子をかぶせる 人に罪をかぶせる 責任をかぶせる 文型調査の目次へ55[着る]
人ガ 服ヲ 着る 人形がきれいな服を着ている シャツ・セーター・コート・制服・和服・ドレス・サリー・水着 黒/白/赤 を着る 麻・絹を 縞模様を着る 60年代を着る パリを着る 所ニ 上半身に黒い服を着る 寒そうだから、上に何か着ていこう このスーツの下に着るシャツは何色がいいでしょうか 慣用表現 恩に着る 笠に着る 罪を着せられる 複合動詞 着込む 着こなす 着慣れる 着古す 着替える56[着せる]
人ガ 人・ものニ 服ヲ 着せる 子どもに服を着せる 犬にレインコートを着せる 人形にきれいな着物を着せる 子どもが寒そうにしている。何か上に着せてやればよかった。 慣用表現 人に恩に着せる この俺様に恩に着せようったって、そうはいかねえや。 人に 罪/ぬれぎぬ を着せる 昇進競争の相手に、ぬれぎぬを着せられた。(相手が私に着せた) 複合動詞 着せ替える 着せ替え人形57[脱ぐ]
人ガ 靴・服ヲ 脱ぐ 上着・シャツ・コート ズボン・スカート・パンツ・靴下・サンダル・スリッパ 帽子・カツラ 野球のマスクを脱ぐ 動物ガ 皮ヲ 脱ぐ 蛇が皮を脱ぐところを一度見てみたい。 所ニ 玄関に靴を脱ぐ 玄関で靴を脱ぐ 服をカゴに脱いでから 慣用表現 ユニフォームを脱ぐ 複合動詞 脱ぎ捨てる58[脱がす]
人ガ 人のものヲ 脱がす 脱がせる 上着・シャツ・コート ズボン・スカート・パンツ・靴下・サンダル・スリッパ 帽子・カツラ 「脱がした」より「脱がせた」のほうが一般的か? 玄関で靴を脱がす 玄関に靴を脱がせる 玄関で 文型調査の目次へ59[食べる]
人・動物ガ ものヲ 食べる ごはん・パン・お菓子・野菜・料理・おかず・甘いもの 牛が草を食べている。 鉄を食べるバクテリアがいるそうだ。 人ガ 食べる お金がなくて、食べていけない。 何をやって食べているの? 手段デ アルバイトで何とか食べています。 この給料では食べていけない。 月5万円で食べていかなければならない。59-2[食う]
[食う] 人ガ ものヲ 食う 飯を食う 毎日ひどいものを食わせられた あー、食った、食った。 人ガ 食う こんな給料では食っていけない。 ものガ ものヲ 食う 時間 人手 手間 金 予算 燃料 この車はガソリンを食う。 人ガ 人ヲ 新人候補が自民党の大物を食った 脇役が主役を食う 人ガ(人カラ)ものヲ 食う 大目玉 げんこつ パンチ ひじ鉄 営業停止処分 お預け 追い立て 肩すかし 締め出し そばづえ 体当たり 直撃 とばっちり どんでん返し 不意打ち 巻き添え 待ちぼうけ 門前払い 闇討ち 呼び出し 複合動詞 食い入る 食い込む 食いちぎる 食い違う 慣用表現 泡を食う 道草を食う 年を食う 同じ釜の飯を食う 臭い飯を食う 冷や飯を食う 鳩が豆鉄砲を食ったよう 人を食ったような60[かむ]
人・動物ガ 人・動物・ものヲ かむ ごはんをよくかんで食べる するめをかむ 犬がもらった骨をかんでいる。 子猫が私の指をかんだ。 私は鉛筆をかむ癖がある。 爪をかむのはよくないよ。 バスが大きくゆれたとき、唇をかんでしまった。 アリにかまれると、意外に痛い。 慣用表現 人・組織ガ 事柄に 一枚かむ 彼はその事件に一枚かんでいる この話には暴力団がかんでいるらしい。危険だ。 複合動詞 かみ砕く かみ殺す かみつく 文型調査の目次へ61[のむ]
人・動物ガ ものヲ 飲む 水・液体・スープ・酒を飲む 人ガ ものヲ のむ 薬をのむ(液体とは限らない) タバコをのむ 人ガ 飲む 今晩、一杯飲みませんか。 人・動物ガ ものヲ 呑む 蛇はカエルを呑むというが、実際に見たことはない。 赤ん坊が十円玉を呑んでしまった。 人ガ ものヲ のむ そんな条件はとてものまないだろう。 要求を 人・ものガ 人ヲ のむ 相手をのんでかかる 相手(の迫力)にのまれてしまった ものガ もの・人ヲ のむ 川の水が家々をのんで流れていく 濁流が 大波が小さな船をのんでしまった 彼女の姿は人並みにのまれて見えなくなった 慣用表現 息をのむ 声をのむ 固唾をのむ 涙をのむ 複合動詞 飲み明かす 呑み込む 飲み倒す 飲みつぶれる 飲み干す62[吸う]
人・動物ガ ものヲ 吸う 空気・煙・ガスを吸う 息を吸ったり吐いたりする 赤ん坊がほ乳瓶を吸う 蚊は動物の血を吸う ストローでジュースを吸う 人ガ タバコを吸う 私は毎日20本吸っている。 ものガ ものヲ 吸う シャツが汗を吸う 押し入れに入れてあった布団が湿気を吸ってしまった。 複合動詞 吸い上げる 吸い込む 吸い出す 吸いつく 吸い取る 文型調査の目次へ63[焼く・妬く]
人ガ ものヲ 焼く 紙くず・木の葉・ゴミ・枯れ草・枯れ木 食べ物、パン、ケーキ、もち、肉、芋、ステーキ そば、ごはん 寝たばこが原因で、家を焼いてしまった。 野原を 山を 遺体を ものができあがるように パン屋がパンを焼く ケーキ・クッキー・お好み焼き 炭を 刀を 陶器・皿・花瓶・壺・アクセサリー 日光デ 肌を 皮膚を 顔を 背中を 夏の太陽で 海で焼いてきた ニ格 日に焼く 原因 真っ黒に焼く 結果 ステーキをいい色に焼く 人ガ 人を 妬く 彼は私のことを妬いている 二人の仲を妬く 人ガ 文+の/ことを 妬く 私が彼女と仲がいいのを妬いているらしい。(彼は) 複合動詞 焼き上がる 焼き上げる 焼き切れる 焼き捨てる 焼き付く 焼き付ける 焼き払う 慣用表現 世話を焼く 手を焼く 焼きもちを焼く64[焼ける・妬ける]
ものガ 焼ける ゴミ・枯れ葉・枯れ木・パン・もち・ステーキ そろそろ焼けたかな? 家が焼けてしまった 山火事で広い範囲が焼けた 熱く焼けた鉄 海水浴で背中が焼けた パンが焼ける(パン屋で) きれいな皿が焼けた 結果のニ格 パンがきつね色に焼ける 壺がいい形に焼けた 真っ黒に焼けた顔 原因のニ格 肌が日に焼ける 人ガ 人・ものニ/ガ 妬ける あの二人、妬けるね。 仲の良さに妬けた。 あの雰囲気が妬ける 人ガ 文+の/こと ニ/ガ 妬ける 仲良くしているのに妬けてしまった。 二人がじゃれ合っているのが妬けてしかたがない。 時間表現 10分で焼ける cf. 10分焼く 複合動詞 焼け落ちる 焼け死ぬ 焼け出される 焼け付く 焼け残る 慣用表現 世話が焼ける 胸が焼ける 文型調査の目次へ65[たく]
人ガ ものヲ たく ごはんを柔らかく/硬めに 炊く 火を焚く 石炭・薪(まき・たきぎ) 落ち葉 たき火 ストーブを焚く 風呂を焚く 香を焚く 複合動詞 炊きあげる 炊き込む 焚き付ける(人を) (小泉辞典)ガス・ガソリンは「焚く」とは言わない66[煮る]
人ガ ものヲ 煮る 野菜・魚・肉・いも・おかゆ・おでん 芋を甘く/柔らかく 煮る 複合動詞 煮込む 煮立つ67[煮える]
ものガ 煮える 野菜・魚・肉・いも・おかゆ・おでん 複合動詞 煮え立つ 煮えたぎる 文型調査の目次へ68[腐る]
物ガ 腐る 魚・肉・卵・果物・牛乳・ご飯 死体・落ち葉・木・柱 食べ物が腐りやすい季節 あいつは心/根性が腐っている 腐った根性を叩き直す 人(の気持)ガ 彼は自分の失敗に/で すっかり腐っている。 まあ、そう腐るな。そのうち、いいこともあるさ。 文て (小泉辞典) 彼はみんなにバカにされて腐っている 息子はテストの点が悪くて腐っているようだ (しかし、これはテに限らない。ノデでも何でもいい)69[住む]
人・動物ガ 所ニ 住む 田舎・都会・町・アパート・自宅・一軒家・小屋 寮・小さな部屋 ほらあな・木の上・森・土の中 巣 海にすむ生き物 南極にすんでいるペンギン 心の中にすむ悪魔 複合動詞 住み着く 住み込む 住み慣れる 文型調査の目次へ70[踏む]
人ガ ものヲ 踏む 土・地面・床・畳 人の足・靴・落ちていた紙・木の枝・落ち葉・石・海辺の砂 虫・蛇・釘 ガム 影 ペダル・ブレーキ・アクセル ものデ 足で かかとで 靴で 故郷の土 外国の地を踏む 抽象的なもの 手続き 段階 手順 場数 経験 初舞台を 文+と 相手はここでひくと踏んで攻め込んだ。 何とかなるだろうと踏んでいた。 ものヲ 〜と 価格をせいぜい3万円と踏んで交渉を始めた。 複合動詞 踏み荒らす 踏み入れる 踏み切る 踏み越える 踏みこたえる 踏み込む 踏みしめる 踏み倒す 踏み出す 踏みつける(踏んづける) 踏みとどまる 踏み鳴らす 踏みならす 踏みにじる 踏み抜く 踏み外す 踏み分ける 慣用表現 ドジを踏む 二の足を踏む 前車の轍を踏む 薄氷を踏む思い 地団駄を踏む たたらを踏む 踏んだり蹴ったり71[蹴る]
人・動物ガ 人・ものヲ 蹴る ボール・壁・人(の足・腹・頭)・石・空きカン を蹴る 酔っぱらいが警官を蹴った。 馬が人を蹴る 大地を蹴って走る 抽象的なもの 提案・提示・申し入れ・要求・要望・頼み・依頼 を蹴る 組合は会社側が提示した額を蹴った。 複合動詞 蹴り入れる 蹴り飛ばす(けっ飛ばす) 蹴散らす 蹴飛ばす 文型調査の目次へ72[つかむ]
人ガ ものヲ つかむ 刑事がスリの腕をつかんだ。 札束を 柱を 鉄棒を 取っ手を 棒の中央/端 をつかむ 上のほうをつかむ 手デ/ニ 両手につり革をしっかりつかむ 両手で木の枝をつかんでぶら下がる 人の心をつかんで離さない 人心・信頼 運をつかむ 幸運・好運 機会 チャンス きっかけ 手がかりをつかんだ 情報 事件の輪郭・全容を ポイントをつかむ 証拠 コツを 意味をつかむ 内容 本質・真実・事実・現状 世界をつかむ 慣用表現 しっぽをつかむ 雲をつかむような話 わらをもつかむような気持ちで73[握る]
人ガ ものヲ 握る 手にボールを握る 石・棒・つり革・切符・リモコン・ナイフを ハンドル・操縦桿を 握る(運転・操縦する) 左手でバットを握り、右手にボールを握る。 (「手で握る」のほうが「手に握る」より多いようだ google検索) こぶしを握る 手を握る (握手する・協力する) すしを握る おにぎりを 金を握る 財布を握る 鍵を 証拠・確証 (人の)弱み・弱点を 権力・政権・実権・主導権を 複合動詞 握りしめる 握りつぶす 慣用表現 手に汗を握る 文型調査の目次へ74[洗う]
人ガ ものヲ 洗う 身体、衣服、器具、食器、食物、車、建物を 洗う 頭、顔、手、足 コップ、野菜、果物 すき間を 床を 胃を 風呂場で足を洗う 手段デ 水で 洗濯機で 石けんで 手で 川で(動作の場所ではない) 人ガ 抽象的なものを(徹底的に調べる) 人の身辺を洗う 組織を洗う 過去を 背景を 事件を 人間/背後/交友/女性 関係を 複合動詞 洗い直す 洗い流す 洗い清める 洗い上げる 洗い出す 慣用表現 足を洗う 血で血を洗う 心が洗われる 波が岸を洗う 波が甲板を洗う75[掃く]
人ガ 所ヲ 掃く 部屋をほうきで掃く 廊下・階段・庭・道 人ガ ものヲ 掃く 庭の落ち葉を掃く 業者が道路のゴミを掃いている 複合動詞 掃き出す 掃き寄せる76[拭く]
人ガ もの/所ヲ 拭く 机(の上)を拭く タオルで 顔/首/胸/背中/腕/足を 拭く ハンカチでめがねを ティッシュでテレビを 黒板消しで黒板を ぞうきん/モップで床を お湯で身体を拭く(湯を使って) 人ガ ものヲ 拭く ハンカチで 涙/汗/水/汚れ/くもりを 拭く (拭きとる対象) 複合動詞 拭き取る77[磨く]
人ガ もの/所ヲ 磨く 鏡/ガラス/靴/車/床を磨く 歯を磨く 金貨/ナイフ/包丁 石/宝石 肌 抽象的なもの 腕/わざを磨く 技術/スキル 能力/才能/感覚/感性/センスを 企画力 表現力 文章力 リズム感 五感 自分 男 女を磨く 経験で/経験によって/経験を積むことで 自分を磨く ものガ人ヲ 苦労が人間を磨く 恋/恋愛が女を磨く 複合動詞 磨き上げる 磨き込む 文型調査の目次へ78[急ぐ]
人ガ 急ぐ 急がないと間に合わないよ。 私は急いでいるんです。早くしてください。 人ガ ものヲ 急ぐ 結論を急いではいけない。 対策・結論・完成・実現・準備・したく・建設・締結を 急ぐ 解明・解決・決定・作成・公表・発表・開港 仕事 結婚 死 話 勝ち 先を急ぐ 人ガ 道ヲ 急ぐ 帰り道・夜道・家路・帰途 人混みのなかを 人ガ 文ことヲ 結論を出すことを急いではいけない 労働条件を改善することを急ぐべきだ 手続きをしてもらうことを急いでいる[急がす・急がせる]
人ガ 人ヲ 急がせる 客がタクシーの運転手に(道を)急がせた 人ガ 人ニ ものヲ 急がせる 子どもに結婚を急がせないほうがいいよ。 人ガ 人ニ 文ことヲ 急がせる 報告をまとめることを急がせた 文型調査の目次へ79[間に合う]
人・ものガ ものニ 間に合う (何かの)時間に間に合う 学校・会議・待ち合わせ・約束・電車・映画・試合・夕食 期限・締め切り・開始・実験・打ち上げ・入学式・臨終 危ないところで告別式に間に合った。 列車・飛行機・船は何とか予定の時刻に間に合った。 内装が開店に間に合うかどうか怪しくなってきた。 スタジアムの建設がオリンピックに何とか間に合った。 生産が注文に間に合わない ものガ ものニ こんどの旅行はいつもぐらいの予算で間に合うかな。 1時間の講演なら5枚の原稿で間に合うよ。適当に引き延ばすから。 こんどの実験はこれだけの試験管じゃ間に合わないよ。補充しないと。 ものガ 「文房具屋行くんだけど、何か要る?」「えーと、今のところ、間に 合ってるな。ありがと。」 人・ものガ 文のニ こんなのんびりしていたら、映画が始まるのに間に合わないかも。 レストランで食事をするのには、二千円ではとても間に合いません。80[遅れる]
人ガ ものニ 遅れる (何かの)時間に遅れる 学校・会議・待ち合わせ・約束・電車・映画・試合 に遅れる 締め切り・開始・実験・打ち上げ・入学式・臨終 時代に遅れている 世の中に 時代の進歩/変化に 若者に カラ/ヨリ 山田選手は先頭から5分遅れています。 先頭より5分遅れている ものガ 遅れる 時計が遅れている(正確でない) 電車・バス・飛行機が遅れている(予定の時間に) 飛行機の出発・離陸・到着・着陸が 研究・計画・予定が遅れている 当初の計画から(より)3か月遅れている 文化・技術・発展・成長 が遅れている 我が国は世界の発展から遅れてしまった 文のガ 遅れる 電車が来るのが遅れた。 式が始まるのが1時間も遅れた。 文型調査の目次へ81[起きる]
A 人・動物ガ 起きる 朝、目が覚めて、少ししてから起きた。 転んだ子供が自分で起きた。 倒れた稲が起きた だるまが起きる 時間 毎朝7時に起きる 夜遅くまで起きている 所デ/ニ 明け方まで勉強部屋で起きていたようだ。 寝ていた病人が、ベッドに起きていた。 B 物・事ガ 起きる (以下、「起こる」と共通) 事故・事件が起きた 革命・戦争・奇跡・地震・問題・混乱 大災害 異常 竜巻 トラブル 波 間違い ミス 行き違い 取り違え ブーム 批判の声 やる気 怠け心 静電気 困った/嫌な/珍しい/信じられない/すばらしい ことが起きた 発作が 腹痛・ぜん息が どよめき 喚声・悲鳴 称賛の声 ブーイングが 火がおきる 炭がおきる 所デ/ニ 二人の間で/に ちょっとした行き違いが起きた。 彼女と会って、彼の心に変化が起きたようだ。 原因デ/カラ 不注意で/から 事故が起きる 戦争は人々の憎しみから起きる 複合動詞 A 起きあがる 起き出す82[起こる]
もの・ことガ 起こる (「起きる」と共通) 人々の間に動揺が起こった リコール運動 不買運動 縁談が起こった 所ニ 関東地方に地震が起こった。 原因 カラ/デ 不注意で/から 事故が起こる 不安からパニックが起こる。 (所ニ)国・産業が興る (「起きる」は言わない) 文明 文化 民族が 火・炭がおこる83[起こす]
人ガ ものヲ 起こす 倒れた者/物 を起こす テーブル・机・イス・本棚を 眠っている者を起こす 猫・犬・生徒・乗客・家族を 身体を 頭を 身を 上半身を 病気の症状を起こす 発作・炎症・腹痛・めまい・貧血・ひきつけ・下痢を やる気・好奇心・いたずら心・短気・ヤケを起こす パニック ブーム 故障を 問題・トラブル・騒動・事件・事故 爆発を 行動を 訴訟 裁判 革命・戦争・クーデターを 地震が津波を 産業を興す 国を 会社・事業を 新産業で町を起こす 土を起こす 畑を 荒れ地を起こす 火を起こす 炭を起こす (静)電気を起こす ものヲ ものニ 録音を文字に起こす テープを起こす 速記を 文型調査の目次へ84[座る]
人ガ ものニ 座る イス・ベンチ・座席・床・地面・草の上に 座る 畳・上座 椅子/ベンチで 座る テーブルの上で立ったり座ったりしている。何してんだろう。 ものガ 度胸・腹・肝が 座っている 覚悟が 赤ん坊の首が座らない 目が座っている 複合動詞 座り込む85[腰掛ける]
人ガ ものニ 腰掛ける イス・ベンチ・座席 石・岩 木の根 箱 階段 縁側86[たつ]
人・ものガ 所ニ 立つ 玄関の前・門の所・台の上・先生の後ろに 立つ 木・街路樹・電柱・ポストが立っている ものガ 所ニ 建つ 向こうに新しいビルが建っている 建物・小屋・マンション・別荘・燈台・鉄塔・ポール・銅像 ものガ 髪の毛が立っている しっぽが立っている犬 人ガ 所ヲ たつ 東京を発つ 席を立つ 人ガ 所カラ 所ニ/ヘ たつ 明日成田から中国へ発ちます 旅にたつ 人ガ ものニ たつ 証言にたつ 相手の立場に立つ 優位/先頭/首位/苦境 に立つ ものガ この洗剤はよく泡が立つ 波・ホコリ・煙が 立つ 湯気・かげろう 噂・評判が 立つ 予定・見通し・目算・計画・めど が立った 言い訳・申し訳 が立たない 腕・筆・弁が たつ あの人たちは今、気が立っている 腹が立つ 鳥肌が立つ 角が立つ 複合動詞 立ち会う 立ち上がる 立ち後れる 立ちこめる 立ち直る 立ち退く 立ちつくす 立ちはだかる 立ち回る 立ち向かう 立ち寄る 文型調査の目次へ87[飾る]
人ガ 所・ものに ものヲ 飾る テーブルに花を飾る 部屋に工芸品を飾る 玄関に絵を飾る 門に門松を飾る 机の上には家族の写真が飾ってあった(写真を飾る) 髪にリボンを飾る 人ガ 所・ものヲ ものデ 飾る テーブルを花で飾る 部屋を工芸品で飾る 新年には門を門松で飾ります 髪をリボンで飾る 文章を美しいことばで飾る (?文章に美しいことばを) ウソでうわべを飾る ものガ ものヲ 飾る 一枚のポスターが壁を飾っていた そのニュースが紙面を飾った 複合動詞 飾り立てる 飾り付ける 慣用表現 有終の美を飾る 故郷に錦を飾る88[塗る]
人ガ 所・ものニ ものヲ 塗る パンにバターを 靴にクリームを 壁にペンキを 顔におしろいを 唇に口紅を 傷に薬を キャンバスに絵の具を 白地図に色を 板の裏側まで色を(裏側にまで) 人ガ 所・ものヲ ものデ 塗る 壁をペンキで 海(の部分)を青い絵の具で 箱を赤い色で 副詞要素 箱を赤く 顔を白く 床を美しく 慣用表現 人の顔に泥を塗る 複合動詞 塗りかえる 塗り込める 塗り固める 塗りつぶす 塗りたくる 塗り立てる 塗りつける89[縫う]
人ガ ものヲ 縫う ぞうきん・エプロン・ゆかた・着物を 縫う 母が人形の服を縫っている 傷口を針で縫う ズボンのほころびを縫う 人ガ ものニ ものヲ 縫う シャツに名前を縫った 〜の合間をぬって バイクが車の〜 忙しい仕事の〜 複合動詞 縫い込む 縫いつける 小泉辞典から 雑踏を縫って駅へ急ぐ 人並みを縫って進む 川は谷間を縫って流れる 文型調査の目次へ90[歌う]
人ガ ものヲ 歌う 歌を歌う 童謡・民謡・校歌・「蛍の光」を歌う ヒバリが春を歌っている 人ガ 人ニ ものヲ 歌う 母親が子どもに子守歌を歌った 人ガ ものニ ものヲ うたう 春の喜びを詩に歌う 時々の気持ちを31文字にうたう(詠う) ものガ ものヲ うたう この詩は春の喜びを歌っている 日本の憲法には戦争放棄がうたってある 日本の憲法は戦争放棄をうたっている 文と/文ことを 日本の憲法は軍隊を持たないことをうたっている このチラシは「××丸はすべての病気に効く」とその効能をうたっている。 複合動詞 歌い上げる91[踊る]
人ガ ものヲ 踊る 踊り・ダンス・タンゴ・ワルツ・白鳥の湖・主役を 踊る 変わった踊りを踊っている もう10曲も踊った 私と踊りませんか? ものガ 躍る 彼女のことばに私の心は躍った 心・胸が 字・ことばが 複合動詞 躍り上がる 躍りかかる 躍り込む 躍り出る 踊り狂う 踊りまくる 慣用表現 人に踊らされる92[弾く]
人ガ ものヲ 弾く 楽器を弾く ピアノ・オルガン・バイオリン・琴・三味線 を弾く 曲を弾く 練習曲・難曲・モーツアルト・ソナタ・静かな曲 「ネコふんじゃった」・でたらめ を弾く93[騒ぐ]
人ガ 騒ぐ 夜中に騒ぐな スーパースターの結婚をめぐって、マスコミが騒いでいる 原因のニ/デ 不公平な判定にサポーターが騒ぎ出した 学費値上げで一部の学生たちが騒いでいる 彼のことばに私の心は騒いだ 複合動詞 騒ぎ立てる 騒ぎ回る 慣用表現 心が騒ぐ 血が騒ぐ 文型調査の目次へ94[包む]
人ガ ものデ ものヲ 包む お弁当をハンカチで 花瓶を新聞紙で包む きれいな包装紙で品物を包んでくれた 人ガ ものニ ものヲ 包む 贈り物を風呂敷に包む スカーフに顔を包む 黒いコートに身を包んで 〜ニ包まれる 疑惑・異様な空気・不安・悲しみ に包まれている この事件は多くの謎に包まれている 試合会場は熱気に包まれていた 人ガ (人ニ)金ヲ 包む(包んで渡す) お祝いに1万円包んだ 大工に祝儀を1万円包んだ 複合動詞 包み込む 包み隠す95[巻く]
人ガ ものニ ものヲ 巻く 足に包帯を 首にマフラーを 頭にタオルを 腰に帯を 棒にテープを 人ガ ものヲ ものデ 巻く ごはんをのりで巻いた 頭をタオルで 人ガ ものヲ 巻く ねじ/ぜんまいを 巻く 包帯を巻く(それ自体を) すだれを巻く ロープ/ホースを 巻く ものガ 朝顔のつるはどっち向きに巻いている? この子のつむじは左巻きに巻いているね。 台風の渦は、北半球と南半球では巻く方向が逆になる。 川の水が渦を巻いている 蛇がとぐろを巻いている 人が煙に巻かれる 複合動詞 巻き上げる 巻き込む 巻き付ける 巻き取る 巻き戻す 慣用表現 舌を巻く とぐろを巻く くだを巻く 文型調査の目次へ96[はる]
人ガ ものニ ものヲ 貼る 封筒に切手を貼る 壁にポスター/世界地図を 瓶にラベルが貼ってある 膝に湿布を貼る 人・ものガ 所・ものニ ものヲ 張る 魚がいそうな所に網を張る 木の間にロープを張って洗濯物を干す 木が地面深くしっかりと根を張る クモが枝の間に巣を張る 幕を張る コートの周りに金網を張る 屋根の上にアンテナを張る 風呂桶/田にに水を張る 弓に弦を張る 草原にテントを張る 多くのサイトにリンクを張る 運動場でコースの両側にロープを張った。 犯人を捕まえようと、警察は空港で網を張っていたが、捕まらなかった。 人ガ ものヲ 胸を張って歩く 気を張っている 欲・見栄・意地・強情を張る 欲張り・見栄っ張り・意地っ張り・強情っ張り (他人の)ほおを張る 店を張る 犯人の隠れ家を張る 所ニ ものガ 池に氷が張る 牛乳の表面に膜が張る 枝の間にクモの巣が張っている ものガ 肩が張る 首筋・腹 慣用的表現 山を張る 値が張る 敵の向こうを張る 複合動詞 張り合う 張り上げる 張り替える 張り切る 張り込む 張り裂ける 張り出す 張り倒す 貼り付ける 張り詰める 張り飛ばす 張り巡らす97[捕まる]
人・ものガ 人・ものニ 捕まる 犯人・泥棒・スリが 警察・警官に捕まる 逃げていた熊・猿・鳥・蛇が 飼育係の人に捕まる 鬼ごっこで最後まで鬼に捕まらなかった バスの中で つり革・手すり・柱・木の枝・隣の人に つかまる 落ちないように、ロープ・はしごにつかまる 人・ものガ 犯人/タクシー/逃げたハムスター が捕まらない 山田さんを探しているんだけど、なかなか捕まらないんだ。見なかった?98[捕まえる]
人・ものガ 人・ものヲ 捕まえる 警察が犯人・泥棒・すりを 捕まえる 子どもがセミ・トンボ・クワガタ・メダカ・ザリガニを 捕まえる 大通りに出てタクシーを捕まえる 文型調査の目次へ99[わく]
ものガ 沸く お湯が沸く 風呂が その知らせに/で 学校中が沸いた 観衆/見物客が ものガ 湧く 水が湧く 泉 温泉 山あいの村で/に 温泉が湧いた 虫が湧く (男やもめに)ウジが湧く (心に)勇気が湧く 喜び/怒りが 興味が湧く 複合動詞 わきあがる 沸き返る 沸き立つ100[わかす]
人ガ ものヲ 沸かす お湯・風呂を沸かす コーヒーを沸かす ものガ 人・ものヲ 見事な演技が観衆/会場を 沸かした ▽「虫が湧く」に対する「湧かす」はあまり使われない?101[さめる]
ものガ 冷める お茶/コーヒー/お風呂/ごはん/料理が 冷める 興奮/情熱/興味が 冷める 愛情/恋心/関係が冷める 人の目ガ 覚める 「火事だ」という人の声で目が覚めた 人ガ ものカラ 覚める 夢/眠り/麻酔から 覚める 心の迷いから覚める ものガ さめる 夢/眠りが 覚める 酔い/迷い/興味が醒める 色がさめる 慣用表現 目の覚めるような102[さます]
人・ものガ ものヲ 冷ます スープを冷ます 熱を冷ます 人・ものガ ものヲ さます 目を覚ます 眠り 酔いを醒ます 迷い 太平の眠りをさます蒸気船 文型調査の目次へ103[勝つ]
人・ものガ 人・ものニ 勝つ 相手/敵/ライバル/クラスメートに 勝つ グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つ。 ものデ (属性) 人は力やスピードでは機械に勝てないが、創造力で機械に勝る。 この車は燃費の点でライバルに勝てない 性能/デザイン/価格 ものニ/デ (状況) 試合に勝つ 試合で競争相手に勝つ 勝負/競争/競り合い/選挙/議論/裁判/戦争 に/で 勝つ 試合に勝って、勝負に負けた。(試合内容では勝っていた) ものニ (相手) 誘惑/欲望/誘い/睡魔に cf. 打ち勝つ 寒さ/痛み/病気に 悪条件に 恋に 甘さより酸味が勝っている 勝つと思うな、思えば負けよ 勝った負けたと騒ぐじゃないよ、あとの態度が大事だよ 複合動詞 勝ち越す 勝ち進む 勝ち抜く 勝ち残る 勝ち誇る104[負ける]
人ガ 人・ものニ 負ける けんかに負ける 次の試合にはぜったい負けたくない 次の試合では 予選では勝ったが、決勝で負けてしまった。 2対1で負ける まだまだ若いやつには負けたくない 勝負/競争/競り合い/選挙/議論/裁判/戦争 に/で 負ける 雰囲気に 困難/圧力に負けない 熱心な誘いに 暑さ/誘惑/睡魔に負ける あいつの図々しさには負けたね。 スピード/価格/性能/デザイン で負ける 度胸/迫力/貫禄/落ち着き/集中力 で負けている 全部で1万300円だけど、300円はまけておこう。 全部で1万300円だけど、1万円にまけておこう。 複合動詞 負け越す105[負かす]
人ガ 人ヲ 負かす 相手/敵/大人を 負かす 試合でライバルを負かした。 勝負/競争/競り合い/選挙/議論/裁判/戦争 で相手を負かす(続く)
→[動詞文型調査2]へ 文型調査の目次へ 主要目次へ 4.動詞文 へ §4 動詞文補説 へ ◇以前、「まえがき」に書いた予定表 記録として、ここに残しておきます。 ............................................................................ まずは予定(タヌキの皮算用)を。 1 一価動詞(必須補語を一つしかとらない動詞) 人の行動 生まれる 生きる 死ぬ 起きる 寝る 働く 遊ぶ 休む 自然現象 降る 吹く やむ 晴れる 曇る (夜が)明ける (日が)暮れる 変化 太る やせる 自他の対の自動詞(変化) 変わる 伸びる 縮む 増える 減る 割れる 壊れる 破れる 擬態語+する(性質など) べとべとする つるつるする どきどきする その他 2 二価動詞(ごく一部の例) 働きかけ(ヲ格) 食べる 飲む 読む 聞く 見る 知る ニ格の対象 勝つ 負ける 乗る 勤める 存在・位置 いる ある 住む 座る 寝る 隠れる 自他の対の他動詞 変える 伸ばす 縮める 増やす 減らす 3 三価動詞(ごく一部の例) 相手と対象 教える あげる くれる 渡す 尋ねる 話す 位置 置く 乗せる 掛ける カラ格 盗む とる はずす 4 移動動詞(ヲ格/ニ格/カラ〜マデ) 歩く 走る 行く 来る 物の移動 運ぶ 動かす 移す 持って行く・来る 5 引用動詞 言う 思う 話す 書く 6 複文を形作る動詞 それぞれの動詞がいくつかの文型をとるので、動詞を一つの文型に所属させることの 意味を問い直す必要がありますが、とりあえず、上のような見通しで進めてみたいと思 います。 .............................................................................. 初めは、適当な動詞を順不同でとりあげていき、ある程度の数になったら、順番など を考え直したいと思っています。まず始めないと。 ◇1価動詞 基本的には補語を一つだけとる動詞が、そのほかにどのような補語をとるのかを考え ていきます。 人間の一生にかかわる動詞、日常の行為、自然現象を表す動詞をとりあげます。 ..............................................................................